(今度こそ、本当の本当に終わりにしないといけないわね)

 これ以上この子の隣に居続けたら、私はこの子から離れられなくなる。
 手放せなくなる。
 今だって、理性ギリギリのところを彷徨っているんだから。

 最初は違ったのにな。

 つい1週間前、12歳の柚樹に出会ったばかりの頃は、この子の悩みをパパっと取り去ってパパっと消えようと思っていた。
 もちろん、消え方はわからなかったけれど。

 悩みを解決する間、せっかくだから、つかの間のスキンシップを目いっぱい楽しもうと楽観的に考えていたのに。
 新しいお母さんがいい人そうで良かったと、安心したはずなのに。
 
 今の私は、ちょっとでも気を抜けば、たとえ鬼になってでもこの子を奪ってしまいたい、私のモノにしてしまいたいと、恐ろしい欲望がせりあがってくる。
 それほどに、狂おしいくらいに、私はこの子を愛しているのだ。

 だって、目の前の柚樹は……相変わらず私の可愛い柚樹だから。
 何歳になっても柚樹は柚樹で、私の大切な大切な宝物だから。

 だけど、この子にとっての私は……。

 ちょんと、柚樹に気づかれないように柚の葉に触れて(ありがとう)と、伝えた。

 まだ幼木だったあなたを見つけた瞬間、なんだか胸がキュンとしちゃって、この家にしようと決めたのよね。
 あの直感は正しかった。

(この子を、ずっと見守ってくれてありがとう。これからも、柚樹と……柚樹の家族を見守っていってね)

 心からの感謝を伝えた瞬間、ふわっと、身体が軽くなる感覚があった。

「でね、感動の再会中に悪いんだけど、もうすぐお別れみたい」

 なるべく軽~い口調で、笑って別れよう。
 そう考えていた。