13日の金曜日が過ぎたにもかかわらず、父さんと二人きりの土曜日は超最悪な一日となった。

 柚樹の予想通り、父さんは何か言いかけては小学校の話題に切り替えるを、朝から繰り返した。
 あまりにウザすぎて、柚樹は食事とトイレ以外、自分の部屋に閉じこもることにした。

 土曜日の最高気温は15℃。昨日の寒々とした大雨がウソみたいに、秋と冬の間の穏やかで清々しい休日だった。
 しかし、柚樹に外に出るという選択肢はない。
 近所を歩けば、クラスメイトに遭遇するかもしれないから。

「はあ~~~~~」
 何十回目かのため息を吐く。休みの日がこんなに長いと思ったのは初めてだ。

 柚樹の部屋にはテレビもなければパソコンもない。スマホはまだ持っていないし、ゲームはリビングでしかできない決まりだった。
 つまらな過ぎて、昔にやりかけて放置した立体パズルの地球儀が完成した。

「だりぃ」
 ベッドに寝転がって、窓の外を眺める。

 それでも、ようやく日が暮れるところまでこぎつけた。黒が混ざったような赤紫色の夕焼けの中を、カラスがカァ~とバカにしたように鳴きながら飛んでいく。

 この調子じゃ、明日も息苦しい休日になるのが目に見えている。せっかくの日曜が台無しじゃん。

(全部赤ちゃんのせいだ)
 疫病神め。

「あああああ~~~、ムカつくっ!」

 柚樹が頭を掻きむしったとき「おーい、風呂沸いたぞ~」と、下から間延びした父さんの声が聞こえた。