「そうだ。忘れないうちにこれ渡しとくね」
 思い出したように柚葉がテレビ台の上に乗せていた一冊のノートを持ってきて、柚樹に差し出した。

「なに、これ?」
 とりあえず、よくわからないことは頭の片隅に置いておいて、ノートの中身をペラペラめくってみる。

『朝食にぴったり! ラピュタパン&シャリシャリフルーツのヨーグルトサラダ』
『青汁粉末入りで栄養満点! みどりちゃんパンケーキ&貴婦人バナナフランベ』
『ノリマシマシ☆しーきちんのばくだんおにぎり』
『ちびっ子大好き☆いちごとキウイのフルーツサンド&ふわしゃきジューシーきんぴらサンド』
『食べだしたらとまらない♪ 超簡単!えのぽんバター(マーガリンでもOK)』

「これって、柚葉が今までに作った朝食のレシピ?」
「ピンポーン! 柚樹でも作れる超簡単なレシピ本だよ」と、柚葉がウィンクした。

 今食べている『さっぱり柚子のキャベツ丼』や、朔太郎に頼まれていた『やみつき! ほうれん草の海苔巻き』もあった。
 分量は何人前ではなく「柚樹の家族分」

 全てのレシピの下には、まるくてへんてこな生き物のイラストが描かれ、赤ペンでポイント! と記されている。

『ヨーグルトサラダは一歳頃から食べられるよ。フルーツは細かく刻んでね。蜂蜜は絶対に入れたらダメ! オリゴ糖命! 赤ちゃん用のヨーグルトを使うと更にグー★』
『青汁の粉入りのパンケーキは栄養満点! 離乳食のおやつにも◎』

(赤ちゃん用のレシピだ)

 キャベツ丼のページには『野菜とキノコを少し取り分けて、全てを細かく切ってコンソメブロックでコトコトやわらか~くなるまで煮込むと、離乳食用のスープになるよ♪』と書かれていた。

「なるほど。これなら家族分と赤ちゃん分、一緒に作れるじゃん」
 なんか、わくわくしてきた。