「あらやだ私ったら、つい」
 おほほほ、と嘘くさく笑っている。

 しまった!って顔で、作り笑いを浮かべる柚葉を見ながら「あのさ」と柚樹は言いかけ、首を横に振った。

「……いろいろツッコミどころがありすぎて、面倒くさいからやめとく」

 わかりやすくホッとする柚葉。
 再浮上する隠し子疑惑。

 そういえば柚葉は「赤ちゃんが生まれるのはめでたい」とか言ったり、家族作文に『赤ちゃんを産むことは、時には命がけになるほど大変なことです。』とか書いたり、女子高生にしては、妙に赤ちゃんに対して思い入れが強い気がする。
 アレってもしかして、経験談に基づく、みたいな?
 
 おほほほ、私ったら~と、ごにょごにょ、ごまかそうと必死な柚葉を見ながら、まあいいや、と、柚樹は苦笑した。

 人には知られたくない事情の一つや二つ、あるもんだし。

 それに、もし仮に隠し子がいたとしても、柚葉は柚葉だ。
 だったらそれでいいじゃん、と思えた。 

 とりあえず、さっきの話で柚葉がどれだけその赤ちゃんのことを大切に想っているか、どれほど愛情を注いでいるかが、ひしひしと伝わってきた。

 こっちの声が聞こえないくらい、夢中で喋ってたもんな。
 すっげー幸せそうな顔で。

 柚樹は柚葉に大きく頷いて見せた。

「とにかく、赤ちゃんを育てるのがめちゃくちゃ大変ってことはわかった。オレも母さんの手伝い頑張るよ。料理とか洗濯とか、やれることはやってみる」

 生まれてくる赤ちゃんはオレの妹で……大切な、家族、だもんな。