帰りの特急列車で、柚葉はさっそくじいちゃんの焚火イモを頬張っていた。

「甘い~、ほっぺたが落ちちゃう~」
 大絶賛で次々と食べ進める柚葉の食欲に呆れながら柚樹は言った。

「一緒に来れば、焼きたても食べれたのに」
「あら、私は冷めてる方が好きよ。それに」と柚葉が意味ありげにニヤリとした。

「なんだよ」
「私がいない方が良かったんじゃない?」
 子供みたいに泣いたことや、じいちゃんに暴露されたおねしょ話がよぎり、柚樹は「うっ」と赤くなる。

「べ、別にぃ、ぜんぜんだけど」
「あらそう?」

「な、なんだよ」
「別にぃ」
 ニヤニヤ笑う柚葉が面倒くさい。柚樹はぷいと窓の外に目を向けた。特急列車は再び長いトンネルを進んでいる。暗い車内を蛍光灯の光が照らし、鏡のように中を反射させる車窓ごしに、柚葉と目が合った。

「柚樹、いい顔になったね」
「は? 何だよそれ」
 いろいろ、見透かされているみたいでやりづらい。でも。

「今度はさ」
 恥ずかしいから窓ごしの視線も外して、柚樹は柚葉に喋りかけた。

「うん?」
「今度は、柚葉も一緒に行こうよ。夏目のじいちゃんとばあちゃん紹介するからさ」

「……」
「柚葉?」
 返事がないと思ったら、柚葉は焼き芋を食べ終えて目をつぶっていた。

「なんだよ、寝たのかよ。おい」
 しばらく呼んだけど反応がないので、仕方なく柚樹も目をつぶる。いろいろあった。焼き芋食べ過ぎてお腹もパンパンだ。
 心地よい揺れに身を任せたら、あっという間に柚樹の意識は途切れていった。