今日の朝ごはんは和食だった。

 白米、塩シャケ、切り干し大根、春菊の胡麻和え、卵焼き。
 全て母さんの作り置き。あとは、買い置きの具沢山味噌汁。

 今日はどんなへんてこメニューかなぁと、柚葉の作る朝食を微妙に楽しみにしていた柚樹はがっかりした。
 ありふれた母さんの、いつもの朝ごはん。見ただけで味がわかる。

 いつもと違うのは、「朝はバタバタするから作りながら食べちゃう癖なの」と、忙しい母親みたいな発言をして、いつもは先に済ませて柚樹の朝食を嬉しそうに見守っている柚葉が、今朝は一緒に食べていることだった。

 柚樹にとっては珍しくもなんともない朝食が、柚葉にとっては違うようだった。

「焼き魚って冷凍できるのね。全然生臭くないし。知らなかったわ」

「あら、胡麻和えに、すったクルミが入ってるのね。甘くて香ばしくて春菊の苦みも消えて、これなら子供でも食べやすいわね」

「この切り干し大根、おだしで煮てて上品な味ねぇ。夕飯で食べたとんかつや唐揚げももちろん美味しかったけど、こういう和のおかずって実はいっちばん手間がかかってるのよね。それと、この冷凍技術!! 全てのお料理が解凍して美味しく食べられるように工夫してあって……。料理に愛が感じられるわね」

 色や形を確かめ、味を確かめ、驚き、感心して、感動している。

(そんなに美味しいかな)
 正直、柚樹にはわからなかった。それくらいどれも食べなれた味だった。

 そうして、朝食を食べ終えた二人は、支度を整え駅へ向かったのだった。