「柚樹は今までたくさんの人たちから愛情を受けて育ったから、自然と身体が動いたのよ」

 ぴょんっとジャンプして柚樹の隣に来た柚葉は、また勝手に柚樹の手を繋いで、トンネル水槽をゆったり歩き出した。

 澄んだ青い水の中を大小さまざまな魚が泳いで通り過ぎていく。赤かったり、青かったり、キラッと光っていたり。尖っていたり丸かったり、群れで行動したり、単独だったり、隠れていたり。

 種類も大きさも、習性もバラバラな魚たちが、たった一つの水の世界を分かち合って生き生きと泳いでいた。
 通り過ぎて、戻って、回って、戯れて。大きなエイが影のように横切っていく。

 深く青い水が揺らいで、いわしの大群が頭上を覆う。銀幕の世界が現れる。

『ママ。おさかなしゃん、きれーねぇ』

 ふと、柚樹の頭の中でつたない子供の声が聞こえた。

『きれーねぇ。柚樹は水族館好き?』
『うん。あしたもこよーね』

『……それなら、年間パス買っちゃおっか。ここは動物園と違っておうちから近いし、ママと柚樹で来れるものね。毎日でもいいよ。柚樹が行きたいだけ行こう』
『いこう~』

 ぎゅーーーーー