「柚葉、グッドタイミングだ。ちょうどイモが焼きあがるぞ」
 パチパチ爆ぜる炎が、夏目のおじいちゃんをオレンジ色に照らしている。

「すごい偶然! 焚火イモ食べたいなってちょうど思ってたの!」
 柚葉は興奮しながら、おじいちゃんに笑いかける。
 焚火イモが食べたいと考えてたら、ちょうど焼きあがるところって。
 ホントすごいよね。

「お前の母さんから、たぶんお前がこっちに来るだろう、ちゅう、電話貰ったからな」
 トングで焼き芋の具合を確かめていた夏目のおじいちゃんが、顔を上げてニヤッと笑う。

「……なーんだ」と、おじいちゃんを横目でジロリと睨む。
 別におじいちゃんは悪くないけど。
 それにしても、おじいちゃんのこういう、なんていうか飄々とした感じ?が、お兄ちゃんにそっくりなのは、何でなんだろう。

 二人は血が繋がってないはずなのに、お兄ちゃんは、お父さんより断然夏目のおじいちゃん似。
 表情やしぐさが似ているせいで、顔まで似ている気がする。

 逆に、夏目のおじいちゃんはお母さんの父親だけど、几帳面で真面目なお母さんとは全然似ていない。どっちかって言えば、春野のおじいちゃん、つまりお兄ちゃんのママのお父さんで、お母さんとは血のつながりのない寡黙な春野のおじいちゃんの方が、お母さんの父親っぽいと思う。

 お父さんは……普通に、秋山のおじいちゃんおばあちゃんの息子って感じがする。
 まあ、中学に入ってからあんまりお父さんと喋ってないし、よくわかんないけど。

 じゃあ、私は?

 私は誰に似ているんだろう。
 ……私とお兄ちゃんは、ちゃんと兄妹に見えるかな。
 私はお兄ちゃんの妹っぽく見えてるんだろうか。

 それとも……

 喉の奥がぎゅっと詰まる感覚に、柚葉は頭をブンブン振った。
 とにかく、こんなに早くに居場所がバレるなんて予想外。
 きっとお母さんのことだから、もうこっちに向かってるんだろうな。
 柚葉はぷくぅと頬を膨らませる。

「お母さんが迎えに来ても、私帰らないから」
「そうだろうと思って、じいちゃん、刺客を用意した」
 待ってましたとばかりに、夏目のおじいちゃんが意味ありげな笑みを浮かべる。

「刺客?」
「よ!」
 背後からポンと肩を叩かれ、振り返った柚葉は目を丸くする。

「お兄ちゃん?」
「家出した妹を回収しに来た」
 お兄ちゃんが、夏目のおじいちゃんみたいにニヤっと笑って立っていた。