「お客様、お客様」
 ふいに肩を揺すられ目を開けると、何故か軍服のお姉さんが「終点です」と微笑んでいた。

(しゅうてん……)
 何のことかわからず、きょとんとした後、また目をつぶりかけて「あ!」と柚葉は反射的に立ち上がる。

 軍服じゃない!
 車掌さん。
 私、特急列車に乗ってたんだ。

「す、すみません! 今降ります!」
 柚葉はペコリとお辞儀をして涙とよだれをピーコートの袖で拭きながら、慌てて支度を始めた。