ガタタン!

 ヒューーーーーン、ババン。パラパラパラ。

 お祭り広場から少し離れた小さな公園のベンチに座って、私とお兄ちゃんは一緒に夜空を見上げる。

 花火大会のパンフレットと一緒に、朔太郎おじちゃんがくれたマル秘メモには、打ち上げ花火の穴場スポットの地図が書かれていて、この場所がそうだった。
 花火はよく見えるのに、人はほとんどいない。
 まさに穴場スポットだ。

『朔太郎にしては気が利くじゃん』
 マル秘メモに書かれた『兄妹仲良くオレの花火に度肝を抜かれろ』の謎コメントに苦笑しながら、お兄ちゃんが言う。

 朔太郎おじちゃんは、青春を野球に捧げ、高校3年生の夏、見事甲子園出場を果たしたけれど、二回戦で敗退。
 その後、スパッと野球とお別れして、花火師の道を目指し、今や花火師の若手ナンバーワンホープ……らしい。

 お兄ちゃん以上に背が高くて、肩幅もがっしりしていて、目が鋭くてぱっと見怖いけど、朔太郎おじちゃんは意外と優しい。
 口は悪いけど。

 小さい頃、お兄ちゃんの部屋に遊びに来ていた朔太郎おじちゃん(その頃は高校生とか中学生だったはずだけど)に、お馬さんごっことか、肩車とかしてもらった記憶がある。
 あの頃は楽しい乗り物だと思っていた。

 ヒューーーーーン。ドンッ!!

 大きな花火が上がって、夜空がぱっと明るくなる。

『すごいねー! これも朔太郎おじちゃんが作ったのかなぁ?』
 振り返ったら、お兄ちゃんが私を見ていた。
 時々する、目を細めたあの眩しそうな表情。

(あ、れ?)