今の私の身長は156センチ。
 大人用の浴衣も着れるはず。
 実はママの部屋に浴衣があることを、私知ってるんだよね。

 あれをサプライズで着る!
 お兄ちゃん、絶対驚くよね。
 浴衣の着付けはいつもお母さんにやってもらってるけど、お母さんにこの計画を喋ったら、絶対反対するだろうな。

『よし!』
 タブレットで、浴衣 着付け、と検索する。
 わかりやすそうな動画を選んで……。

 明後日まで時間もないし、とりあえずサイズアウトした浴衣を使って練習開始。

『……まずは、肌着を着る。肌着って、これかな』

『衿先から三分の一くらいを両手で持つ……』

『裾線がくるぶしの位置で、床と平行になるようにって、これ長さ足りないじゃん! とりあえず平行にするだけやっとこ』

『右手で腰紐の中心を持ち、右の鎖骨のすぐ上に当てて……』

 難しすぎて、エアコンがついているのに汗だくだ。
 でも、ちょっと面白いかも。
 帯の結び方もいろいろあるんだ。

『あ、この結び方、かわいい。でも私より桜ちゃんに似合いそう。こっちは……優愛かな。で、これは葵で……』

 いろんな帯の結び方を見ていたら、浴衣が似合いそうなクラスメイトたちの顔が浮かんだ。
 みんなのスタイルと顔に合わせて、浴衣の色や髪型を想像する。

 桜ちゃんは、この白地にピンクのお花がついている浴衣が似合いそう。
 髪型はポニーテール。
 大きなシュシュをつけてアイドル風なイメージ。
 優愛は紺地に紫の幾何学模様がついたレトロな浴衣だ。
 くるっとまとめ髪にして、左側に大きなかんざしをつけたいな。
 葵は……

 いろいろ検索していたら、メンズ浴衣が出てきた。
 男の人の浴衣もいろいろあるんだな、帯の結び方もいろいろだ。

『貝の口、浪人結び……なんか時代劇みたい。あ、この浴衣、お兄ちゃんに似合いそう』

 私なら、お兄ちゃんにピッタリの浴衣を選ぶことができるんだけどな。
 浴衣だけじゃなく、洋服だってそう。
 お兄ちゃんのかっこよさを引き立たせるコーディネートなら、絶対誰にも負けない自信がある。

(…………)
 試しに、洋服 コーディネート 仕事と、検索。

『そっか、スタイリストか……へえ、自分のブランド立ち上げてる人もいるんだ』

 お兄ちゃんに似合う服のブランドを作ってトータルコーディネートして……

 想像したらこの上なく胸が躍った。
 まるで、自分の人生に光の道が射したみたい。

『って、今はこんなことしてる場合じゃなかった! 浴衣、浴衣』