「柚葉」
 柚樹は赤ちゃんに呼びかけた。

「オレが兄ちゃんだよ」
 それから、赤ちゃんだけに聞こえるようにそっと顔を近づけて、柚樹は囁く。

「今度はオレが守る番だね」
 柚樹の声が聞こえたのか、それとも、ただの偶然か。

 目をつぶったまま、柚葉は、にこーっと愛らしく笑ったのだった。

                                       おしまい