とびきりの笑顔で「血のつながりなんか、くそくらえよ」と、柚樹の頭をわしゃっと撫でる。

「ママ、オレ」
「大丈夫! ママがいなくても、柚樹はみんなにたくさんたくさん愛されてるわ」
 ママがいつものようににっこり笑っている。

「だけど、オレ……オレのせいでママが」
「あ、もしかして等価交換のこと? あんなの嘘よ、ウソ」
「へ?」
 ママがペロっと舌を出す。

「昔好きだったアニメにそういうのがあってね~。あれ、ハマったのよねぇ。柚樹がお昼寝している時にこっそりDVD観てたなぁ。こう~、手をパンって合わせたあと、両手を地面につけると、いろいろ錬成できちゃうの」

「……じゃあ、赤ちゃんの命と交換にずっと一緒にいられるっていうのは」
「そんな都合のいいことあるわけないでしょ。だいたい、赤ちゃんの命を取り込むって化け物じゃあるまいし、できるわけないじゃない」

「……」
 呆然とする柚樹の前髪をそっとかき分けながら、ママは柔らかく微笑んだ。

「ママは成長した柚樹に会えて本当に嬉しかったわ。ママの大事な大事な柚樹が、素敵に成長して、みんなにいっぱい愛されてるってわかったしね。息子とデートもできて満足満足。もう、お腹いっぱいで破裂しちゃう」
 柚樹の瞳を覗き込んで、ママがゆっくりと、噛みしめるように言った。

「もう、大丈夫ね」
「……うん」
 ダウンジャケットの袖で乱暴に涙を拭いて、柚樹は口をきゅっと結び、力強く頷く。

 大好きなママを、ちゃんと安心させたい。
 だから泣いちゃダメだ。と奥歯を噛みしめた。

「ママは柚樹をずっとずっと愛してるからね~」
 ママがいよいよ消えていく。
 大大大、大好きだよ~、愛してるよ~と、どこまでも明るいママ。

「お、オレも!!」
 柚樹も慌てて叫ぶ。

「オレも、ママをずっとずっと愛してる! 絶対に……絶対に忘れないから!」
 柚樹の言葉を聞いて、一瞬、ママのくりくりの瞳が大きくなった。
 それからすぐに、すごく嬉しそうな笑顔で、懸命に口を動かした。