柚樹と父さんの食事を心配して、体調が悪くなるまで唐揚げやおかずを作っていた母さん。

 参観日の算数の時間、いいところを見せようと、勇んで手を挙げ、結局答えを間違えてみんなに笑われた柚樹のことを「答えは惜しかったけど、手の挙げ方がピッとしていてとてもよかったわ。姿勢も正しくて、後ろから見ていて、お母さん感心しちゃった」と、べた褒めした母さん。

 危険なことをすると鬼より怖い母さん。

 病気の時は、寝ないで看病してくれる母さん。
 おでこに手を乗せた時の柔らかくて温かい手にいつもホッとした。
 苦しくて目を開くと、母さんが「何か欲しいものある?」と優しく聞いてきて、それで、すごくすごくホッとして……

 母さんとオレは血が繋がっていない。
 母さんはオレを産んでいない。
 だから、母さんは、偽物?

 血が繋がっていないから、自分を産んでいないから、母さんは、偽物の母親??
 その母さんから生まれてくる赤ちゃんも、偽物の妹? 偽物の家族??

 柚樹の味方をして、ウザいぐらい抱きついてくる夏目のばあちゃんも偽物?
 遠くから柚樹を見つけて「おーい」と手を振った夏目のじいちゃんは? じいちゃんも、偽物??
 黄金色の甘い甘い焚火イモの味が蘇る。

『孫に本物も偽物もあるか。血がどうのと言う奴は言わせとけ。じいちゃんとばあちゃんがユズを孫だと言っとるんだから、孫に決まっとろうが』

(あ)
 今やっと、はっきりわかった。

「オレが、本物と思ったら、本物なんだ」

 クラスのみんながどう思おうが関係ない。他人なんて、関係ないんだ。

 大切なのはオレがどう思っているかだ。

 母さんも、赤ちゃんも、夏目のじいちゃんばあちゃんたちも、オレは大好きだ。
 父さんや、秋山と春野のじいちゃんばあちゃんたちと同じように大好きで、大切だ。

 自分にとって大切な人たちを、血が繋がってるかどうかで区別するなんて、変なんだ。

 オレの大切な、家族。みんなみんな、柚樹にとって大切で、かけがえのない、本物の家族。

「ごめん」と、柚樹は呟いていた。