犬になって君と過ごした『特別な時間』

 彼女がため息をついた理由は謎のまま。

「パピちゃん、散歩に行くよ!」

 ご飯を食べ終え、片付けると芽依が微笑みながらそう言った。
 そして散歩の時に持っていくトイレ用の袋とかの準備を始めた。

 外に出た。

 外に出ると朝の風が気持ちいい。
 五分ぐらい住宅街を歩くと公園に着いた。

 着いてすぐにベンチでひと休みする。
 俺は芽依の膝の上に座った。

 なんで俺は膝に乗せられたりしてるんだ?

 なんだか不思議な気持ちになる。
 彼女の膝の上が落ち着かなくてソワソワしてきた。

「ここから降ろしてくれ!」

 俺は芽依に言った。

「あら、いっぱい『ワンワン』ってお話してるね! 珍しい。うんうん、そうだねー! お天気いいね!」

 彼女は微笑み、優しい表情をしながら俺の顔を見つめた。

 ――何も通じない……。

「でもね、今日の夜、雨降るみたいだよ。今日は花火大会なのにね。でも、終わる頃に降るみたいだから、開催はするのかな?」

 少し間があいてから芽依は呟いた。

「涼真も行くのかな? この前告白されていた女の子と……」

 はっ? 芽依は何を言ってるんだ? その子とは一切何もないし。俺が一緒に行きたい相手は……。