犬になって君と過ごした『特別な時間』

「も、もしかして『好き』って聞こえた?」

 ドキドキしながら俺は質問した。

「うんっ!」

 満面な笑みを浮かべて彼女は答えた。
 恥ずかしくなって、でも伝えられたのが嬉しくて、俺は照れながら笑った。

 周りから拍手と歓声が湧き上がった。

「うわ、俺ら注目浴びてる……恥ずいな」
「ね、注目されてる。やだー……」
「逃げるぞ!」

 俺は芽依の手を握りしめた。
 ほどけないように、強く。
 大切な宝物をあつかうみたいに。

 芽依の家に着いた。

 パピちゃんが玄関前にいた。
 こっちに気がつくとしっぽを振りながら近づいてきた。

 パピちゃんは、こうなるために入れ替わってくれたのだろうか。

「パピちゃん、ありがとう!」
「パピちゃん、なにかしてくれたの?」
「ふふっ! 芽依も、今日は色々ありがとう!」

 俺は、芽依にずっとやりたかった、頭ぽんぽんをやって、家に帰った。