犬になって君と過ごした『特別な時間』

 花火が終わった。

「パピちゃん、花火綺麗だったね! いつの間にか雨もやんでるし、良かった!」

 静かになった空を見上げながら芽依は言った。

 ラストは連続花火の大きな音で、俺の声は全部かき消されるし……。

 あぁ、もう――。

「芽依が、大好きだー!!」

 最後にもう一度、伝わらないだろうけど全力で叫んだ。
 こっちを見た芽依が全力で目を見開き、驚いた顔をした。

 しばらくその表情のまま彼女は動かない。
 どうしたのか心配になっていると彼女が言った。

「なんで、涼真がいるの?」って。

 もしかして俺、人間に戻った?

 まずは手を、それから見える身体の部分を確認した。

 元の姿に戻っていた。
 いつだ? いつ戻ったんだ?