その年の秋、今度は鉢と一緒に球根を買ってきた。
裏庭ではなくて玄関の脇で育てようと思ってね。
 鉢に土を入れて球根を置く。 土をかぶせてから水をたっぷりとやる。
根付けがうまくいくかどうか、、、不安は有ったけどやるしかない。
 ぼくは全盲だし、どこまでやれるかも分からない。
そんな中で冬を迎える。 土が凍り始めた。
どうすればいいのか分からなかったけれど、自然に逆らわないほうがいいなと思った。
 ここは北海道なんだ。 冬になれば庭一面凍っていてもおかしくはない。
それに球根だってそれくらいは分かってるだろう。
 土の表面が完全に凍ったら春まで水やりはお休み。
この時期に水をやると中まで凍ってしまうから。

 それからしばらくは雪の中に埋もれることになる。 掘り返すわけにもいかない。
これが自然の流れなんだからね。
 もし、この時期に室内に入れたりすると芽が弱ってしまって育たなくなる。
冷たい土の中でしっかりと球根を鍛えるんだ。
 そして3月。 周りの雪が解け始める。
そうすると鉢の土も柔らかくなってきて指で穿れるようになる。
そうなると水やり開始だ。
 最初は朝の一回だけ。 夜はまだ寒いからね。
 そのうちにだんだんと気温が上がってくる。 そしたら夕方も水やりを始める。
まだまだ芽は出てこない。 土の中では顔を出しているんだろうけどね。

 4月になるといよいよ芽吹きの季節。 こうなると水の量を増やす。
これから花が咲く8月までは水を増やすんだ。
特に花芽を吹き出す6月からは大変だよ。
気温も上がってくるからね、乾燥させるわけにはいかない。
 カサブランカは土が乾いてもビチャビチャでも都合が悪い。
その辺の調節は本当に気を遣う。
そしてね、ぼくが心掛けたこと、それは、、、。水をやりながら声を掛けてきたこと。
おはようとか、こんにちはとか、それだけでもいいから声を掛けてきた。
そうすることで伸びるのが早くなるんだよ。
 もちろん、4年目の今もそうしている。
話し掛けることでカサブランカもちゃんと答えてくれることが分かった。

 5月になると蟻さんも登ってくるようになる。 蟻退治は欠かせないね。
 日もしっかり当たるようになるから成長も早くなる。
玄関は北側だったからどうかなって心配はしたけど。
 やっぱりね、朝日を十分に浴びたほうがいいみたい。
夕日はちょっとね、、、。