「でも俺、吸血鬼だよ?
人間の敵といえば敵だし…。」


「でも何回も私を助けてくれました。」


「それはそうだけど…。
でもどう足掻いても人間から血を貰わないと生きていけない。」


「はい、知ってます。」


「そんな人……いや、人でもないやつを本当に好きなの?」


「はい。」


「…ありがとう。本当に嬉しい。」


少し泣きそうな顔で微笑んで、そっと抱きしめられる。


「あの…、」


「ん?」


「さっき女の人とあの教室に入っていくのを見ちゃったんですけど…。」


「あぁ、うん。」


「やっぱり、吸血してたんですよね?」


「そうだよ。」


「そうですよね……。」


やめて欲しい、そう言いそうになって慌てて引っ込める。

そんなの死ねと言っているのと同義だ。


「安心して。もうしない。」


「えっ?」


「秦野ちゃんが好きって言ってくれてるんだし、他の女の人とベタベタしてるの見せたくない。それに俺も吸血なんてしたいわけじゃないし。」


「でもそれじゃあ先輩が……。」


「大丈夫。吸血鬼が人工的に作ってる血液があるんだ。
あ、吸血鬼だから人工って言わないかもだけど。

混血たちはそれを食糧にして生きてるし、知り合いの混血に言えば多少は譲って貰えると思う。」


「吸血鬼の技術は発展してますね。」


「そうだね。普通の人よりは長生きだからかな。

それに混血は人間に紛れて生きてることがほとんどだから、人間の技術も真似できるからね。」


「へぇ〜。じゃあ意外と身近に吸血鬼が居たりするのかな。」


「いるよ〜。たくさんいる。
大きいスーパーとか行けば、その店にいる中の1人くらいは吸血鬼なんじゃない?」


「そんなにも…!」


「うん、意外とね。」