『海は特別だろ』
って、掠れた甘い声で呟くんだもん。
心なんて容易に持っていかれるよね。
でも彗の言う"特別"は幼馴染だからだよね。
「…でも今日みたいにいない日もあるでしょ?」
『メッセージくれればいいよ。』
分かった、と答えれば、喜ぶ声が聞こえて来る。
裏表のないそのリアクションに、そばに居なくても声だけでわかる表情。
「今日はホテル部屋1人なの?」
『そうだよ』
「どこに行ってるの?」
『京都、9/18放送!見てね!』
ふざけたような声でいう彗に、笑が溢れる。
「なんで幼馴染に宣伝するの?」
『だって海全然俺の出てるテレビ見てくれねぇじゃん』
拗ねた声。
なんで、バレてるんだろう。
「そんなことないよ」
『あるだろ』
「ないよっ」
しょーもない小競り合いが始まって収拾がつかなくなると、
『はあ、やっぱり海の声落ち着くな。』
なんて突然言い出す。
そんな撫でるような声に、体が熱くなっていく。