それに、紫龍のアジトにくるなんて明らかに罠だってわかってるはずなのに――。


「もう…。くるのが遅いよ」


憎まれ口をたたいてみるも、わたしの目からぽろぽろと涙があふれた。

藍がきてくれたことへの安心感とうれしさとで。


一冴さんの言うとおり、藍はここへおびき出された。

これも一冴さんの計画のうち。


でも、藍なら――。


「返してもらおうか、ウチの嫁を」


この場の状況を変えてくれる。


そんな気がした。