それは、“あいつ”だって。


無抵抗のまま恐怖に耐えるわたしを見て、一冴さんは口角を上げる。


「いいね〜、その反抗的な態度。手なづけたくなる」


舌なめずりをする一冴さんの顔が徐々に近づいてきて、わたしは覚悟を決めて固く目を閉じた。


わたしの中で…なにかが壊れようとする。


と思った――そのとき。

突然、けたたましい音が倉庫内に響く。


あまりにも大きな物音に、とっさに飛び起きてしまうほど。


「何事だ?」


一冴さんは舌打ちをすると、わたしから体を離した。

そして、ピンクの髪の人を引き連れ、様子を見にコンテナの陰へと消えていく。


「へ〜。こんな早くにお出ましとはな」


1人残されたわたしの耳に届いたのは、だれかに語りかけるような一冴さんの低い声。

それを聞いて、『まさか』と思った。