もちろん、一冴さんは施設を飛び出したきり戻っていないし、返信がこないことはわかっているけれど、それでも毎年のように。


藍のお母さんのお父さんで、藍のおじいちゃんである東郷家の会長には秘密だけれど、藍も藍のお父さんも一冴さんとの絆は絶やしたくないと考えていたから。


わたしが見た一冴さんのあの格好や塀を飛び越えて出入りしていたところを見ると、招待状を持って招待客としてきた感じではない。


だけど、藍のことが気になって――。

ひと目見たくて、ああして現れたんじゃないのかな。


わたしにはそんなふうに思えた。


それに、一冴さんはこうとも言っていた。


『今年もまたどんな死んだ目をして、無理やり組まされた女と踊ってるかと思って見にきたら』


“今年も”ってことは、まるで去年や一昨年も藍のことを見ていたような言い方。