一年前の冬――。
「ごめん、他に好きな子できたから別れて」
三年も付き合った彼に突然呼びだされて、
“もしかしてプロポーズ?”
だなんて期待に胸を弾ませていた私に放たれた言葉。
いや、だってさ、ここ。
デートスポットで有名な場所だよ?
期待して当然でしょ!?
海に向かって放たれる七色のレーザー光線。
穏やかな波に映る揺れ動く七色の光。
道沿いの木々に宝石のようにちりばめられた電飾。
目を奪われるような光の数々。
ね? 最高の夜景でしょ!!
『綺麗だね』
『うん』
『だけどさ、お前のほうが綺麗だよ』
なぁんて会話を繰り広げて、
『これ』
『えっ、何……?』
『決まってるだろ』
渡された小さな箱に、期待に胸を膨らませながら開けた瞬間、
『結婚しよう』
なぁんて言われて、きつく抱きしめられてキスして……。
「って何よ! 別れるって!!」
「だから、他に好きな子ができたんだ……悪いな」
そう言いながらもまったく悪怯れた様子のない彼は、逃げるように私の元から去っていった。
こんな場所に私一人残して。
おーい。戻っておいでー。
今ならまだ間に合うよー。
なーんて思ってみても影も形も見えなくなって。
仕方なく一人で歩き始めた私の頬に、ふと、冷たいものが当たって上空を見上げてみた。
「雪……」
初雪かな。
はぁ〜あ、これで彼と一緒だったら、
『寒いからおいで』
『キャッ』
とか何とか言って体を抱き寄せられて、赤くなりながらも温もりを感じられたのに。
周りはそんな風に寄り添うカップル。
失恋したばかりの私には目の毒だわ。
「雪のばっかやろー!!」