ふぅ……。
私、気持ちを確信したのに結局伝えられなかったんだよね。
あの後一五とは、雪が降った日に三回会えた。
去年は珍しく雪がよく降ったよなぁ。
一五は本当に雪の降る日に突然現れて、なぞなぞ出してどこかに連れて行って置いて帰る。
それの繰り返しだった。
「本当に振り回しすぎっての」
自然と笑いが零れる。
一五のことを思い出すだけで、こんなにも気持ちが満たされる。
まったく。
早く私の前に現れてよ。
そうでしょ?
あなたはいつも雪の降る日に現れた。
ならさ、例え呼ばなくたって雪が降ったら現れてくれてもいいじゃん。
も〜っ!!
私は思いっきり頭を掻き毟った。
伸ばし続けた髪はぐしゃぐしゃに絡まっていく。
ねぇ……
どこにいるのよ?
今なら分かる。
私が何で冬真に別れを告げられたのか。
一五が教えてくれたのよ。
これだけ人を好きになったことなんてなかった。
つまり、冬真への想いって薄かったんだなぁ……って。
「悪いことしたよなぁ」
三年も付き合っていたのにね。
どれだけ彼につらい思いをさせていたのかって。
「あれっ……? 雪、やんじゃった」
さっきまで目の前をちらついていた雪が、いつの間にか消えていた。
雲の切れ間から鈍い月の光が輝きを見せる。
私は上空を見上げ、目を閉じた。
一五と最後に会った日。
この紙を渡された日のことを思い出していた。
あの日は雪、降ってなかったんだよね。
二月三日、節分の日――。