「雪降りだしたね〜」
そんな声が聞こえてきたのは、三限の授業が終わって食堂で友達と昼食をとっている時だった。
うっそー!!
私が見ていない隙に?
「ごめん、私午後の講義休む」
「どうしたのよ、柊〜?」
友達の問い掛けに答える暇もなく、慌てて食器とトレーを戻して食堂を飛び出していた。
「本当だぁ」
外に出ると空からはちらほらと白い粒が舞い落りてきていた。
久しぶりの雪だよ、雪っ!
「ねぇ〜、雪降ったよー!」
お昼休みの賑やかな大学の敷地内、人の波を掻き分けながら叫んでいた。
これで、私、変な人確定かな。
気にしないもんね〜。
ねぇ、どこに現れるの?
「ねぇってば〜」
こんな呼び掛けで現れるとは思ってないけれど、問い掛けられずにはいられなかった。
それに、神出鬼没な彼。
もしかしたら現れるかもしれない、そんな期待を少しばかり抱きながら。
「……クスッ。そんな大声出さなくても聞こえてるよ?」
たくさんの人の中、一際目立つ金色の髪。
忘れもしない、その笑顔。
周りの人たちもその声のほうを向き、目を丸くさせていた。
だって、いくら大学生だからってあんなにド派手な髪の人っていないもん。
それに頭一つ飛び抜けている彼。
その迫力に圧倒されることは言うまでもないよね。
「本当に現れたーっ」
「約束しただろ?」
「うん、そうだね〜」
彼は人の間を掻き分けながら、私の元へと近づいてきて手を取り走りだした。