はぁ……
そうだった。

一五は雪って言うより、吹雪みたいな人。

本当に人のことを引っ掻き回してさ。


だけど、いつの間にか心を奪われていて、振り回されるのも悪くないって思ったんだよね。


あれっ?
結局この時も問題の答え教えてもらえなかったし、話もしてないんだった。

私の結婚話は次にしたんだっけ。

まぁいいや。

大体、何で男は熊なの?
今にしてみればツッコミどころ満載。


あの人間離れした体力、雪の降る日に会える訳。

あの山、私の家から歩いて三十分はかかるのよ。

それなのに、私を抱き抱えたままかなりの早さで着いた気がする。


あなたは一体何者?


私は砂浜に続く階段をゆっくりと降りていった。



「綺麗なんだけどなぁ」



去年、一五と見た景色。

今年も同じように七色の光で揺らめく海の波。

舞い散る雪が海の中に儚く消えていく。


一人で見ても楽しくない。

一五と一緒に見たから、あんなにも綺麗に見えたんだ。


もーっ。どこにいるのよー。


私は握り締めていた紙を広げて、その文字とにらめっこした。

そうよ。名前だってこの紙もらって初めて知ったんだから。

私、名前さえ聞いてなかったんだよね。


ん?


もしかして、あなたの名前は一五じゃないってこと?

けどけど、下に書いてるし!!



『下重一五』



って。

読み方違うのかなぁ。

一と五でしょ。

いちご……としか読めないし。


そう言えば、一五ってよくなぞなぞ出してたよね。

もしかして、これも?


あ〜っ、もうっ。
分かるかっての!!


私、頭固いって言ったじゃん。


も〜っ。

ったく。
私「も〜も〜」ばっかり。牛か、っての。

じゃあ一五は、雪の日に現れる男だから……。


「雪男」ね!!

うーん、我ながらいいネーミングセンス。



「はぁ……、雪男……か」



そうそう。

次に会えたのも、本当に雪が降った日だったなぁ。