「大きいの作れよ〜」
「分かってるってば!」
歩いて行った先は、少しなだらかな山の斜面。
なぜか私たちは雪だるまを作っていた。
こんなに雪が降り積もること自体が珍しいこの地域。
私は子供のように胸を躍らせながら、雪を転がし丸めていた。
「女っていいよなぁ」
「はぁ? また、突然どうしたの?」
脈絡がないことにも慣れたけど。その意味は気になる。
彼はひたすら雪を転がし丸めながら話を続けた。
「女は綺麗だろ。男はまるで熊じゃんか」
「そんなことないよ。あなたは綺麗」
「俺のこと綺麗って思ってくれてるの?」
私の言葉に気をよくしたのか彼は雪を丸める手を止めて、私を後ろから優しく包み込んできた。
どうしていいのか分からずに固まる。
彼の冷たい体。
耳元で笑い声が聞こえる。
「も〜っ! 雪だるま作るんでしょ」
「そうだね」
相変わらずクスクスと笑いながら、私から離れるとクシャとした笑顔を見せた。
……なぜか、離れた瞬間少し寂しく感じた。
自分で言っておきながら、離れてほしくなかったなんて。
「よしっ、できた」
「えっ? あ〜っ、一人で完成させてるー!!」
「ひいらぎがボーッとしてるからだよ」
等身大の大きな雪だるま。一緒に完成させたかったのに。
「ひいらぎ〜、楽しいな」
「うん?」
「帰り道分かる?」
「へっ? 分かるけど」
「ならよかった。まったな〜」
はいーっ!?
また突然!!
既に数メートルは離れている彼。
「ちょっと〜! 今度はいつ会えるのよー!!」
彼に向かって叫ぶ私に、
「んー、雪が降ったら」
不思議な言葉を残して消えていった。
おーーーい。
また取り残された私。
「雪が降ったらっていつになるのよーっ!!」
叫んだ声はいつまでもコダマしていた。
……これが一五と過ごした二度目の日のことだった。