今まで、私、葉澄明日香(はすみあすか)高校2




年生は、恋をしている相手、長瀬理玖(ながせ




りく)に告白が出来なかった。




したかったけど、出来なかった。




なぜなら。




相手は成人男性だから。




理科の先生で、入学して出会ってからずっと、




片思い。




先生はイケメンで、私以外の女子からも結構人気がある。




だから、早くしないと先生を取られてしまう。




はぁ……先生の彼女になりたいなぁ。




先生と秘密で付き合う……なんて少女漫画の




ような事もまぁ出来なくはない。




でも、私ルールは破らないタチだから。




こんな事を思いながら歩いているのは放課後の廊下。




今は蒸し暑い時期で、外は放課後でもまだ明るい。




……ん?ここから見る外エモくない?なんか
ラッキーかも。




そうテンションが浮かれていた時。




神様が怒ったのだろうか。




急に空が光り、今までに聞いた事が無いほど大きな音が鳴り響いた。




………え、雷?




その事実がわかった瞬間、冷や汗が流れた。




なぜなら、私は雷が大の苦手。




小さい頃、雷が鳴ったら鬼が来る合図なんだよとおじいちゃんが言った冗談を本気で信じてしまい、雷の度大泣きする私をあやすのが大変だった……そうだ。





おじいちゃんの冗談だったけど、雷が鳴った日には必ずと言っていいほど悪い夢を見るので、この歳になっても雷は嫌い。




それにしても……今の雷凄かった……。




今まで以上に雷への恐怖が高まり、壁を手で伝いながら歩く。




すると、電気が消えた。




さっきエモいと思っていた景色とは大違いで、外は土砂降り。




うぅ……ほんとに無理……。




そう思って目を細めた時。




前からタッタッタッという足音が聞こえた。




え、な、なに!?ま、まさか……幽霊……




「キャーーー!!」




思わず叫んでしまった。




すると、前から「おわっ」と声が聞こえてきた。




「……え?」




閉じた目をゆっくり開けると、そこには長瀬先生………が少しだけ、ほんの少しだけ幼くなったみたいな人が立っていた。




「大丈夫か……あ」




何故か、ハッとしたような表情になる先生……みたいな人。




……いや、みたいじゃない。




白衣だって着てて、メガネだってかけてて……何よりカッコ良さを増してる泣きボクロ!




しかも左目の斜め下。




この特徴は絶対に……




「先生!」




「えっ、あっ、いや………俺は転校生……」




逃げようとしている先生の言い訳をすぐ見破るように、首にかけている名札を指さす。




「あっ………」




どういう事か分からないけど……先生が高校生に戻ってるなんて、これ以上ないチャンス!




私は、先生のネクタイを引っ張り、顔を近づけて言う。




「長瀬先生!私と付き合ってください!」




「…………はっ!?」




そして、私はニッコリと微笑む。




「センセ、逃がしませんよ?」




こうして、私と先生……いや、長瀬くんとの高校生活が始まった。