俺以外と結婚の予定はないと言い切った菊乃に、期待をしてしまいそうな自分がいるのだ。
「無理もない。イタリアはいい国だが、生まれ育った日本から離れているんだ。ホームシックにもなるさ」
「博已さんは心細い感じになりません? あ、博已さんは以前もこうして海外にいたんだった。じゃあ、ならないですよね」
「いや、俺だって寄る辺ない気分になる。でも、今は菊乃がいてくれるから」
菊乃の両頬を包む。このままキスをしたら、菊乃はどんな顔をするだろう。唇ではなく額に唇を落とした。
「寂しく、不安なら、俺を頼りにしてほしい。俺がきみを頼りにしているように」
「博已さんは私を頼りに思ってくれるんですか?」
額のキスを菊乃は嫌がらない。くすぐったそうに目を細めている。
「している。菊乃が隣にいてくれるだけで、なんでもできるよ」
「そんな言い方、ダメです。女子は誤解しますよ」
「誤解されてもいい」
きみが好きだ。ずっと好きだったから、妻にと望んだ。日本から連れ去って、ここまでやってきた。
「菊乃、俺にとってきみが特別なのは……もうわかっているだろう」
「私たち……パートナー……相棒で……その……」
菊乃の心が閉じていないのが伝わってくる。暗闇の中、揺れる瞳はけして俺を拒絶していない。
無理にでもキスをして組み敷いてしまえば、俺たちは男女の仲になれるのかもしれない。
だけど、このタイミングでそうしてしまっていいのか?
契約で結ばれた俺たちの関係を、一息に飛び越える関係を結んでいいのか?
「博已さんのことが大事です」
好きだと言おうと口を開きかけたら、彼女の言葉が先に出た。
「無理もない。イタリアはいい国だが、生まれ育った日本から離れているんだ。ホームシックにもなるさ」
「博已さんは心細い感じになりません? あ、博已さんは以前もこうして海外にいたんだった。じゃあ、ならないですよね」
「いや、俺だって寄る辺ない気分になる。でも、今は菊乃がいてくれるから」
菊乃の両頬を包む。このままキスをしたら、菊乃はどんな顔をするだろう。唇ではなく額に唇を落とした。
「寂しく、不安なら、俺を頼りにしてほしい。俺がきみを頼りにしているように」
「博已さんは私を頼りに思ってくれるんですか?」
額のキスを菊乃は嫌がらない。くすぐったそうに目を細めている。
「している。菊乃が隣にいてくれるだけで、なんでもできるよ」
「そんな言い方、ダメです。女子は誤解しますよ」
「誤解されてもいい」
きみが好きだ。ずっと好きだったから、妻にと望んだ。日本から連れ去って、ここまでやってきた。
「菊乃、俺にとってきみが特別なのは……もうわかっているだろう」
「私たち……パートナー……相棒で……その……」
菊乃の心が閉じていないのが伝わってくる。暗闇の中、揺れる瞳はけして俺を拒絶していない。
無理にでもキスをして組み敷いてしまえば、俺たちは男女の仲になれるのかもしれない。
だけど、このタイミングでそうしてしまっていいのか?
契約で結ばれた俺たちの関係を、一息に飛び越える関係を結んでいいのか?
「博已さんのことが大事です」
好きだと言おうと口を開きかけたら、彼女の言葉が先に出た。



