「からかわないでください。私、スタイルよくないですし、おなかもぷにぷになので、似合いませんよ」
「こうして抱きしめているとスタイルが悪いとは思えないけれどな」

俺の声ににじむ欲に菊乃は気づいてしまっただろうか。ここから先は止まれなくなる。精一杯の理性で、俺は菊乃から身体を離した。

「シャワーに行ってくるよ」
「あ、あの紅茶を……」
「風呂から出たらもらおうかな」

俺は欲望でくらくらしそうな頭を抱え、急いでシャワーに向かった。これ以上、菊乃と接触していては何をしてしまうかわからない。



その晩、ひとつのベッドで休むとき、俺はかすかに落胆していた。
一日一回のスキンシップは先ほど済ませてしまった。毎晩、スキンシップの名のもとに、菊乃を抱きしめて過ごす夢の瞬間が終わってしまっているのだ。

「おやすみ、菊乃」

背中を向けて横になると、すぐに背に柔らかな感触と熱を感じた。菊乃が後ろから抱き着いているのだとわかり、鼓動がすさまじい勢いで鳴り響きだした。

「ご、ごめんなさい。最近毎晩習慣だったので。なんとなく……寂しくて」
「そうか」

俺はくるりと寝返りをして、菊乃に向かい合う。暗闇の中でも菊乃の顔がうっすら見える。

「ホームシックですかねえ。あはは、すみません」

一生懸命そんな説明をする菊乃に、愛がどんどんあふれてくる。もしかして、本当にわずかだけれど、菊乃は俺に親愛以上の気持ちがあるのだろうか。