エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「私も寝ます」

博已さんの後をついていきながら悶々と考える。いびきや寝言、寝相は大丈夫だろうか。パジャマは寝ているうちに着崩れたりボタンが外れたりしないものを選んでいる。いや、そもそも緊張して眠れない気がする。
博已さんが先にベッドに入り、掛布団をめくって私が眠るスペースを空けてくれる。

「お邪魔します」

ならって横に仰向けになったら、布団の中で腕を引かれた。博已さんの胸が目の前にある。そのままベッドの中で抱き寄せられてしまった。

「博已さん……!」
「今日のハグがまだだったと思ってね」

博已さんの低い声が耳に響く。緊張とパニックで目の前がぐるぐる回った。嫌なんじゃない。だけど恥ずかしくて死にそう。
博已さんはいつもの習慣で何気なくやっているだけなのだろう。だけど、私は意識してしまう。
そういう関係にはならない約束の契約婚。
わかっているのに。

「終わり」

博已さんはささやいてかちこちになった私の身体を解放した。

「驚かせたか?」
「いーえ! 確かに忘れてましたものね!」

わざとらしいくらい明るく言って、私は自分のスペースに戻る。幸いにもキングサイズのベッドは広くて、私と博已さんの間に隙間を作ることは容易だった。エアコンの音を聞きながら、私は自分用の薄掛けを羽織り、博已さんに背を向けた。平静を装っているが、心臓の音はずっとうるさく、一向に眠りは訪れそうもないのだった。