エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

挨拶回りを終え私と博已さんはマンションに戻ってきた。
お昼までかからなかったというのに、身体はぐったりと疲れている。飛行機の疲れもあるし、気を張っていたのもあるかもしれない。

「菊乃、来てくれてありがとう」
「いえ、ちゃんと挨拶できていましたかね」
「できていた。充分だよ」

博已さんは窓辺に立ち、私に指さす。

「あのあたりに市場がある。これからふたりで散策してみよう」
「いいですね。でも、博已さんは疲れていませんか?」
「今眠ってしまうと、夜に眠れないからな。それに、堂島さんも言っていたが、慣れるまでは俺が外出に付き合う」

日本とは治安が違うということもあり、博已さんは気にしてくれているようだ。

「近くのマーケットや市場くらいなら、私ひとりで明日にでも行けますよ」

そのためにイタリア語も学んだのだ。あまり心配しすぎないでほしい。

「菊乃がしっかりしているのはわかる。信頼もしている。ただ、俺が不安なんだ。しばらくは俺のためにもひとりでは出歩かないでくれるか?」
「……わかりました」

私の顔を見て、博已さんは少し笑った。

「そんな顔をしないでくれ。わかった。何度か一緒に外出したら、日中はきみひとりで出歩いてもいいから」

博已さんが面白そうにしているけれど、私そこまで不満丸出しだったかしら。