エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「奥様、いきなり脅すようなことを言ってすみません。おひとりで行動されることも多いかと思いましたもので」
「いえ、教えていただけ助かります」
「おすすめのグラニータのお店もお教えしますからね。イチゴ味が特に人気なんです」

そんな話をしているうちにあっという間に在イタリア日本国大使館に到着してしまった。バスを使って通勤する予定だそうだけれど、これは歩ける距離かもしれない。

大使館の敷地内はイタリアの中の日本だ。門をくぐり、車付けで降りた。入口の前にも年代物の置物が置かれていて、おそらく文化財クラスのものだと思う。こんなに無造作に置いてあっていいのかしら。
博已さんについて館内に入った。まずは大使の執務室に向かう。

「外務省国際情報統括官組織第五国際情報官室、加賀谷博已、本日より着任いたしました。よろしくお願いいたします」

博已さんが最敬礼で頭を下げ、私もならった。

「よく来たね。よろしく。奥さんも遠いところをご苦労様」

横溝イタリア大使は五十代後半の白髪の男性だ。小柄だが背筋がぴしっと伸びて格好のいい人である。

「文化振興だったね、仕事内容は。今度和太鼓のコンサートを開くって聞いているよ」
「はい。日本で計画を進めてきました。こちらでの会場や協力者の方々との調整がつき次第ご報告いたします」
「きみの初仕事だ。盛り上げてくれよ」

博已さんのお仕事が文化交流や文化振興のためというのは聞いていたけれど、和太鼓のコンサートなんてイベント計画が進んでいたとは知らなかった。
博已さんは私に仕事の話を一切しない。私の方から、もっと興味を持って聞くべきだったかしら。