エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「す、すごい。素敵……」
「ああ、いい部屋だな。大使館の人間が整えてくれた」

博已さんは部屋のチェックをしていて、私が景色に感嘆の声をあげたのだとは気づいていないようだ。

「三年間、きみが居心地よく過ごせる部屋ならいい……って、菊乃は景色を見ていたのか」
「あは、なんか現実感がずっとないんですけど、今ぐわっと押し寄せてきました。私、イタリアに来たんですね」
「ああ、きみにとっていい経験になれば、俺も嬉しい」

三年間、彼の奥さんのふりをし続ける間、私も多くを学ぼう。この国のことを知ろう。文化と言葉に触れていこう。

「さあ、菊乃、大使館に赴くまでまだ時間はある。眠り損ねたんだから、少し休んでおきなさい」
「私、元気ですよ! 朝ごはん食べに行ったりできます!」

それはそうとして、スーツケースを寝室にしまおうと、博已さんとともに寝室のドアを開けた。

「あ」

私と博已さんの声が重なった。そこにはキングサイズのダブルベッドが一台あったからだ。
数舜の無言。
それから博已さんが慌てて言った。

「早急に手配しなおす。数日待ってくれ」

ベッドのことだとすぐにわかった。私たちは同居五ヶ月間、同じ部屋で寝起きはしていない。

「だ、大丈夫ですよ、私は!」

慌てて言ったのは、一応私と彼の立場からだ。

「大使館の方が揃えてくださった設備でしょう。早々に勝手に変えたらまずいですよ。それにベッドを別にしたいなんて、不仲に思われるかもしれません」