エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「ここ、ですか?」

思わず博已さんを見やってしまったのは、その建物がどう考えても歴史的な建築物にしか見えなかったからだ。東京のマンションを想像していた私からすると、「こんなところに住んでいいの?」といった感じ。

「ああ、ここだよ」

博已さんはスーツケースを押しながら、エントランスに向かう。私もあわてて追いかけた。
エントランスに入って驚いた。建物の中は近代建築なのだ。
コンシェルジュが二十四時間いるようなマンションだとは、見た目だけじゃわからない。
博已さんがコンシェルジュと話して部屋のカードキーをもらってきた。部屋に私を促しながら言う。

「ローマ市内は建築に制限があるからね。こういったマンションも外観は変えず、中をリフォーム、リノベーションして使うんだ」
「は~、頑丈なコンクリート作りだからできることですねえ」

中庭が広く取られ、大きな木と庭が見えた。住人は利用していいらしい。建物内部はかなり建て替えや修繕を進めているようで、私たちの部屋から、中庭を挟んだ区画は少し古びて見えた。

「この部屋だ」

博已さんがドアを開ける。八階の私たちの新居は、東京の住まいほどの広さで、新築と見紛うばかりにぴかぴかだった。新しい家具がそろっていて、窓からはローマの街の一部が見えた。あの塔はなんと言ったっけ。
ちょうどこのタイミングで曇った空から太陽の光が一筋刺した。宗教画のような世界に思わず声がもれる。