「騒がしい夜になってしまってすみません」

伯父たちが帰宅すると、もう遅い時間になっていた。両親との画面通話もあわせて、私の家の事情に何時間も付き合わせてしまったことになる。

「いや、きみと結婚する以上、親戚づきあいは当然だ。今後もトラブルが起こったら、俺が力になる」
「ありがとうございます、博已さん。もう、何も起こらないといいんですけれどね」
「その通りだな。だけど、きみを陥れた従兄に関しては、まだ警戒しておいた方がいいかもしれない」

私が出したお茶の湯飲みを手に、博已さんは何か考えている様子だった。
博已さんは本当に優しい。契約相手だからと何事にも丁寧に対処してくれている。それに対外的な顔は、私とはかけ離れた大人の男性といった雰囲気。
やっぱり私じゃ不釣り合いだなあと思いつつ、彼に選んでもらえたからにはふさわしい人間になりたいとも思う。

「さあ、そろそろ休もうか。菊乃、先に風呂を使ってくれ」
「いいえ! 博已さんが先です! 明日もお仕事なんですから」
「弁当を作ってくれるきみの方が早起きじゃないか」

そう言って、博已さんは私を先に浴室に追いやるのだった。