エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

「お父さん、私はそんなことしてません。説明が遅れたのはごめんなさい。でも、私、絶対に使い込みなんかしていないから」
『じゃあ、どうして菊乃はマルナカ弁当をクビになったの?』

正さんのことを話せばいいだろうか。陥れられたと言ったら、両親は信じるだろうか。信じたときに、伯父の家と確執が生まれるのは間違いない。
言い淀んだ私に代わって、博已さんが口を開いた。

「菊乃さんは真面目に勤務をしていました。私は外務省の職員ですが、私との結婚の話も出ていて、金銭的にも困窮していません。そんな菊乃さんが、横領などすると思いますか?」

両親がぐっと詰まった。博已さんが外務省の職員と名乗ったことに驚いたのだろう。

『悪いですが、あなたが何者であるか、菊乃が金に困っていたかを言葉だけで信じるわけにはいきません。こちらは信頼する親戚から報告されているんです』

父の言葉はもっともだ。博已さんが低い声で言った。

「私の言葉が信頼に足らないのは仕方ありません。でも、娘さんの言葉は信頼してほしいです。親戚の言葉よりも、娘さんの言葉を聞いてください」
「お父さん、お母さん、全部話すから」

双方の家を気遣う前に、両親に私の無実を訴えるべきだったのだ。私が悪いことをしたと思う方が、両親にはつらいのだ。それがわからなかった私は馬鹿だ。

私は事の顛末をすべて話した。社内で正さんとうまくいっていなかったこと、身に覚えのない使い込みの証拠をでっちあげられたこと、警察の介入を提案したが正さんに止められたこと、自分ひとりでは自分の無実を立証できなかったこと……。