エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

母は事の次第を知っているようだ。考えてみれば、両親が伯父に連絡を取ることは考えられる。そのときに私の話が出れば、伯父も事情を話すだろう。私が話していないとなれば余計に。

『会社のお金を使い込んだってどういうことなの? 菊乃はそんなことをする子じゃないってお母さん思ってるけど、どうしてあなたからは何も言ってくれないの?』
「お母さん……」

私が事情を説明するのを渋っていたばっかりに、母はショックを受けている。伯父の口からいきなり聞かされた横領の容疑、娘からの連絡はなし。それでは両親だって信用できないだろう。完全に裏目だ。

「菊乃、俺も話すから、画面通話に切り替えられるか?」

後ろから博已さんの声が聞こえた。

「ご両親がそちらにそろっているなら、顔を見て話した方がいいだろう」

博已さんは挨拶に行くより先に、両親と会ってくれるつもりなのだ。私の危機を見かねたのかもしれない。
私は頷き、母に言った。

「お母さん、事情を話すから画面通話にしてもいい? お父さんもそこにいるんでしょう?」

ソファに博已さんと並んで腰かけ、スタンドを使ってスマホを固定した。画面の中には険しい表情の両親の姿。さらに私の隣の男性を見て、驚いてもいるようだ。

「こんな形で紹介することになってごめんなさい。こちら、お付き合いしている加賀谷博已さん」
「加賀谷です。菊乃さんとは結婚を前提に交際させていただいています」

博已さんがなめらかな口調で言い、頭を下げた。
父が戸惑いを隠さない様子で私たちを見渡し、それから言った。

『こんなときにそんな挨拶はいい。どういうことだ、菊乃。おまえは伯父さんの会社の金を使い込んだのか?』