エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない～きみは俺だけのもの～【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

四月、博已さんと同居を始めて二週間と少しが経過した。
私たちは相変わらずいいルームメイトとして暮らしている。夫婦になるのだからお互いをもう少し知っておいた方がいいというのは、博已さんの言葉で、食事のときはふたりでいろんな話をする。彼が休みの土日は、散歩をしたり、買い物をしたりして過ごす。

憧れの人との暮らしに気負っていた私も、平穏な毎日に安らぎを覚えていた。きっと博已さんが私に気を遣わせないように、考えてくれているからだ。
不愛想だなどと自分で言う彼だけれど、一緒に暮らせば暮らすほど、いろんな表情が見えてくる。
朝は苦手で、起きてきたときの顔はいつもくしゃくしゃ。朝食はたくさん食べられないので、昼食はボリューム多めになってしまうそうだ。彼に持たせるお弁当箱は同居スタート時に買ったものだけれど、大きめにして正解だと思う。
夕食後は仕事をしていることが多い。そんなに仕事ばかりで大丈夫かと心配もしたけれど、本人曰く、仕事ではなく資料集めや準備だという。本人は苦も無くやっているので見守っている。きっと長年こういったペースでやってきたのだ。いきなり闖入してきた私があれこれ言わないほうがいい。
お風呂が遅くなってしまうときだけ声をかけるようにしている。お風呂あがりの髪を下ろした博已さんはちょっと可愛いのだ。

博已さんのいろいろな顔を見るたび、私の中で優しい気持ちがふくらんでいく。でもこれは恋じゃない。恋であってはいけない。だって、契約は三年間なのだから。
おそらく三年の任期を終え、帰国したら私たちは円満に離婚届に判を押す。お互いの人生に戻るために。

「さて、そろそろ結婚にむけて親に会いにいく日取りを決めようか」

その日の夕食後、珍しく仕事ではなく雑誌を広げている博已さんが言った。