エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

滑らかな弁舌は私に結婚を申し込んだ時のよう。おそらく彼本人は自分でも言う通り、朴訥で、口数が多いタイプではない。しかし官僚としての彼は、こういった弁舌鮮やかなタイプなのだろう。

「清原さん、先日は本当にありがとうございました。清原さんに教えていただけたおかげで菊乃に会え、気持ちを伝えることができました」

清原さんが目を白黒させている。情報過多!と顔に書いてある。

「あ、じゃあ、あのとき小枝店長に会いに行って、結婚まで決まっちゃったんですかぁ?」
「そ……ういうことになるかな」
「私がプロポーズしたんです。ずっと好意を抱いていたんですけれど、こんな形で会えなくなるのはたまらないと思って。菊乃は受け入れてくれました」

すらすら出てくる言葉は彼の中で用意されていたものだろう。博巳さんが片想いしていた設定なのだ。

「え〜!! そうだったんですかあ!」
「でもいつも小枝店長と楽しそうにやりとりしてましたもんね」
「小枝店長も嬉しそうでした!」

アルバイトふたりまでそんなことを言い、私はすでに真っ赤だろう顔を伏せて何も言えなくなってしまった。一方、博巳さんは慣れたもので私に寄り添い静かな口調で言う。

「今日はご挨拶をしたくて菊乃とふたりで来ました。本当にありがとうございました」
「清原さん、ありがとうね。おかげで、す、す好きな人と、結婚が決まったから」

精一杯言葉にしたけれど、好きな人という単語に盛大に詰まってしまった。
三人は私が照れているのだと思っただろう。
他の客も来店してきたので、私たちはお弁当を買い、アルバイト三人に手を振って店舗をあとにした。