「会議は眠くならずに済みましたか?」

小首をかしげて尋ねてくる彼女。なんて可愛いんだろう。
店内に総菜を選んでいる客はいるが、レジには俺だけ。他の店員がバックヤードにでも行ってくれたら、彼女に言える。会話を引き延ばしたい。

「いえ、ポテトサラダを我慢したのに眠くなりました。あんなことなら食べればよかったです」

世間話をしながら、様子をうかがうが、アルバイトの店員はレジ横の箸やお手拭きの補充をしていて、離れそうもない。そうこうしているうちに、総菜を選んでいる客が俺の後ろについてしまった。

「それで……そう思ったらどうしてもこの店のポテトサラダが食べたくなってしまいまして」

結局ポテトサラダの話しかできていない。違う。そうじゃない。俺は海外転勤をして、きみには会えなくなるんだ。あと半年、その間に俺と……。いや、何を言おうとしているんだ、俺は。

「まあ、ありがとうございます!」

彼女はポテトサラダのパックを手に花開くように笑った。可愛い笑顔だ。

「本日は終日サービスデーです。今日の午後に作った美味しいポテトサラダをお持ちください」
「ありがとう。来てよかったです」

情けないことに、俺に言えたのはそれだけだった。