エリート外交官は契約妻への一途すぎる愛を諦めない~きみは俺だけのもの~【極上スパダリの執着溺愛シリーズ】

私がクビになったというのは翌日には広まったようで、アルバイトの清原さんからは心配するメッセージをもらった。私は急な退職を詫び、トラブルがあったが日比谷公園前店にかかわることではないので引き続き勤務を頼みたいという返信をした。清原さんは、アルバイトスタッフの中でもリーダー的存在。きっと上手に話してくれるだろう。

翌日は何ができるかいろいろ考えたが、徐々に気力が萎えていくのも感じていた。怒りや焦燥が次第に強い疲労感に変わっていく。培ってきた時間はなんだったのだろう。伯父を信頼していた。伯母はきつい人だけれど、姪として可愛がってくれた。
それなのに、ふたりとも息子の讒言を信じてしまった。
むなしい気持ちでいっぱいだ。

「もういいか」

マルナカ弁当で頑張る理由がなくなった。どれほど私が名誉回復に努めても、誰も聞く耳を持ってくれないならもういいのだ。
クビから二日目の夜、私はおとなしく自分の荷物を取りに会社へ向かった。退職の手続きをしたが、退職金は出ないそうだ。横領でクビの扱いだからだろう。

「菊乃ちゃん」
「小枝さん」

営業所では工場パートの女性たちが何人も待っていてくれた。もう就業時間が過ぎている彼女たちは私のために居残っていたのだ。