「実用的過ぎたかな。ネックレスや指輪の方がよかったか?」
「いえ、いいえ。すごく嬉しいですよ! コートにぴったり。博已さん、ありがとう!」

菊乃が目を細めて笑う。その笑顔にも言葉にもなんの嘘もなく、心の底から喜んでいるのが伝わってきて、彼女の素直な性質をことさら愛しく思った。

「菊乃、クリスマスディナーを駄目にしてすまない。結婚式前の大事な準備期間に寝込んで申し訳ない」
「何を言ってるんですか!」

一転、菊乃が眉間にしわを寄せ、怒った顔になる。

「頑張りすぎて体調を崩した人が謝るものじゃないです!」
「でも、自己管理がなっていなかった。きみよりずっと年上なのに、情けない」
「もしかしてだらしない姿を見せたって思ってますか?」

菊乃がヘッドボードにプレゼントを置いて、俺の隣に腰掛ける。顔を下から覗き込んでくる。

「私の前で弱っているところは見せたくなかった?」
「そんなつもりは……。いや、多少あるかもしれないな」

菊乃に言われて、自分では気づかなかった気持ちにぶつかった。そうか、俺はどこかで菊乃を年下の庇護すべき存在だと思い続けてきたのかもしれない。

「きみより十歳も年上だからと気負っている部分はあるだろうな。あとは単純にきみに幻滅されたくないから、情けないところは見せたくない」
「もう、そんなこと言わないでください」

菊乃がふーとため息をついた。