予想した通り、俺の熱は翌日も下がらず、一日中病院のベッドで過ごすこととなった。ディナーはキャンセル。菊乃はほぼ一日中病室にいてくれた。

熱が下がったのと、担当医師がクリスマス休暇に入ったという理由で、三日目には退院許可が下りた。しかし、当分は自宅療養で安静とのことだ。
解熱しても関節痛や倦怠感は強く、自宅ではほとんどベッドで過ごしている。菊乃は甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれた。日本から持ってきていたうどんを柔らかく煮たり、おかゆを炊いたりと、食事を作って部屋にもってきてくれる。
大丈夫だと断っても倒れたら大変とシャワーの前で待っているのだ。着替えている間にシーツの交換や部屋の換気を済ませ、俺を部屋に追い立てながら菊乃は熱心に言う。

「また熱があがるといけないから、寝ていてくださいね。お水もちゃんと飲んで」
「菊乃が思いのほか過保護だとよくわかったよ」

苦笑いをしつつ、せっかくのクリスマスディナーをキャンセルにしてしまった申し訳なさは心から消えていかなかった。
ベッドに戻る前に、クローゼットの中に隠しておいた包みを取り出す。ベッドに腰掛け、菊乃を呼んだ。

「なんですか」
「これ。本当はクリスマスに渡したかったんだ」
「え、プレゼントですか?」
「開けてみてくれ」

菊乃が期待の表情で包装紙を開ける。
俺の選んだプレゼントはファーのついた皮の手袋だ。コートに似合うように選んだつもりだったが、アクセサリーの方が喜んだだろうかと今更不安になる。