「博已さん、あらためてなんですけど、助けにきてくれてありがとう。格好よかった。怪我をさせてしまってごめんなさい」
「怪我は自分の不注意だ。絶対にきみを取り戻そうと焦っただけ。無事でよかった」

博已さんが腕を伸ばしてくるので、私はベッドから降り、彼の腕の中に飛び込んだ。すると、こらえていた涙があふれてきた。身体もがたがた震えてきた。

「本当はすごく怖かったです。死んじゃうかと思った」

しゃくりあげながら言う私の背を博已さんが撫でる。

「俺も怖かった。きみを失ったら生きていけない」
「博已さん、大好き。よかった。またこうして抱きしめてもらえて」
「ああ、もう絶対に離さない」

泣きじゃくる私を、博已さんはいつまでも撫でさすってくれていた。



ジャコモ・ヴァローリはその後逮捕された。政権を取るために、マフィアと結託しテロを計画していたというのが罪状。私を狙ったヴァローリと繋がりのあるグループも全員逮捕された。
こうして私と博已さんの日常は戻ってきたのだった。