僕は夏の初め、ビーチへ繰り出した。
 繰り出したものの、ビーチにはまだ人っ子一人いなかった。片田舎のビーチだ。湘南とかじゃない。
 僕はそれでも、シャツを脱ぎ、海パン一丁になった。サンダルを脱いだ。
 僕は海へ入った。足をいれると、生ぬるかった。
 僕は海の中を歩いた。ちょっとそこまで行くと、引き返した。そうしてまた海の中へ行き、引き返した。と、堤防の上の方から女の子たちの声がした。見ると、堤防の上に女の子のグループが現れた。水着だった。わーおー。僕は見上げた。女の子たちも僕に気付いた。
 横にポニーテールをした女の子が、
 「あのお」
 と、女の子。
 「はい」と、僕。
 「おひとりですか」
 「はい」
 女の子はあたりを見回した。
 「他誰もいないようですね」
 「そうなんです。僕以外誰もいなくて」
 「へー」
 そう言って、女の子たちは堤防から降りてきた。きゃーきゃー黄色い声が飛ぶ。
 僕は砂浜へあがった。
 女の子たちが来た。微笑んでいる。
 頭の横にポニーテールをした女の子。
 「あのう。私たち、今日自分たちだけで夏祭りをしにきたんですけど、一緒にしませんか?」
 うをー。胸💛(きゅん)
 「いいよ」
 女の子たちは微笑んだ。僕も微笑んだ。
 女の子たちは荷物を砂浜に置いた。一人の女の子が、荷物から、何やら出した。女の子は微笑んで僕を見た。胸💛(きゅん)。ビニールのいろいろなものが出てきた。
 「これ、今から膨らませるんで」
 と、女の子。女の子は浮き輪を取った。そうして僕ににっこりした。胸💛(きゅん)。女の子大きく息をすると、は浮き輪に空気を入れた。それを女の子でかわるがわるやっていた。女の子は浮き輪を僕に差し出した。
 「あのう、あなたも手伝ってくれませんか」
 「いいよ」
 僕は浮き輪を持ち、大きく息を吸い込み空気を入れた。
 浮き輪を放した。
 「ありがとう」
 と言って女の子は微笑んだ。女の子はまた空気の入ってない浮き輪を取った。
 「今度、これに空気いるんで」
 女の子は言って、大きく息を吸い込んで浮き輪に空気を入れた。また女の子でかわるがわるやっていた。女の子はまた浮き輪を僕に渡した。僕は浮き輪を持ち、大きく息を吸い込んで、空気をいれた。そうして女の子に渡した。
 女の子はまた浮き輪を出した。
 「これで最後なんで」
 と、女の子は言った。女の子はかわるがわる浮き輪に空気を入れた。女の子は僕に浮き輪を渡してきた。僕は大きく息を吸い込んで空気を入れた。