夏菜子が意識を取り戻したのは保健室だった。



 寝返りを打った音で、保険医も気付いたようだ。

「起きた?」




「夏菜子!」




 続いてイケメンの声も聞こえてきた。


藍だった。



「ごめんね、ちょっと血を吸いすぎたかもしれない。

夏菜子の首元が柔らかかったから吸いやすかったんだ」





 そう言って藍は夏菜子の寝ているそのベッドに腰かける。





 優しく頭を撫でて、先ほど唇をつけた夏菜子の首筋を撫でる。





『ドキッ……』





 告白されることもなければ、告白することもなかった、所謂男性への免疫が少ない夏菜子にとって、刺激が強すぎる。

 また眩暈がしてきた。



「ほらほら、あんまり刺激しないの。

あなたが急に吸血なんてしちゃうから本当に貧血起こしちゃってるのよ」

 保険医が藍の手を夏菜子から遠ざける。



 貧血を起こしている、ってことは、本当に血を吸われたの?

 遊ばれたわけじゃなくて、ヴァンパイアって、本当に存在するの?



 疑いの目で横に座る藍をまじまじと眺める夏菜子に、藍は盛大な勘違いをする。