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図書室で荷物をまとめ終わった2人は、待ち合わせ時間にいつものカフェへ向かった。


 夏菜子は右手と右足が一緒に動きそうなほど緊張している。


 胸の鼓動が藍の元まで届いているのではないかと思うほどだ。




 『ドキッ……』




 藍が夏菜子の右手を掴み、恋人つなぎをした。


 藍の力は凄い。手を握ってもらうだけで、安心する。


 カフェが見えてきた。入口に1人女性が立っているのが見える。


「か……夏菜子、ちゃん」


 そう言ってきたのは、私服姿の彩だった。




 名前で呼んでもらった……。



「あの……本当にごめんなさい」


 彩は勢い良く頭を下げた。


「最初は藍くんが格好いいなって思ってた程度だったんだけど、か、夏菜子ちゃんに夢中になってからズルいなって、思うようになっちゃって」


 彩は頭を下げたままだ。


 夏菜子も緊張したまま焦りを隠せずになんとか声を掛ける。


「いいよ、大丈夫だから、頭を上げて? 困っちゃうよ、ほらお店の前だし」


「とりあえず中に入ろうか」


 藍はそう言って店のドアを開けた。