「おまえら、噂を本気にするのか?」




低い声が響いた。藍だ。




「俺たちは純粋に恋愛しているんだ。

 もちろん、俺は結婚したいと思っている」



 素直な感情に対して、ヒューヒューと男子が盛り上がる。




「真面目に恋愛している人間をバカにするなんて、恥ずかしいと思わないのか!?」




 それは、彩に向かって言った言葉のように思えた。



「夏菜子と一緒に居るとこういった噂を流すって言われた。これは噂だ。

 夏菜子のために我慢していたけど、俺はいつも通り宣言する」



 藍は教室内を舐めまわすように見渡す。





「俺は夏菜子が大好きだ。

邪魔する奴はどうなってもいいんだな。

ヴァンパイアを甘く見るなよ」




 そこまで言うと、教室内は静かになり、ゆっくりと、午後の授業の準備をそれぞれ始めだした。




 ――――かっこよかった……。




 面白がって噂で遊ぶ人も何人も残るだろう。

 私も、ありもしない噂に立ち向かっていかなければ。


 夏菜子は強くそう思うのだった。